在宅医療と在宅介護の現状と誤解・問題点

自分がどこで最期を迎えるのか、考えたことはありますか?
内閣府による「平成25年高齢社会白書(http://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2013/zenbun/s1_2_3_03.html)」によれば、「治る見込みがない病気になった場合、どこで最期を迎えたいか」という質問に対して、「自宅」と答えた人が最も多いという結果になりました。
なんと、全体の半分以上となる54.6%もの人が自宅で最期を迎えたいと希望しているのです。
やはり、家族と一緒の慣れ親しんだ空間で人生を終えたいと思う人が多いようです。
しかしながら、現実は違います。自宅で最期を迎えたいと思う人が多いのにもかかわらず、8割以上の人々が、医療機関や介護施設で人生の幕を閉じているのです。
そこで、今回のテーマは「在宅医療」と「在宅介護」
私達にとって、避けて通ることの出来ない問題になっています。
その現状と問題点、在宅医療を取り巻くいくつかの誤解について、一緒に考えていきましょう。
Contents
在宅医療と在宅介護とは?
はじめに今回のテーマである「在宅医療」と「在宅介護」の定義を確認しておきましょう。
「在宅介護」は、高齢者が医療機関で病気の治療を受けながら、家族やヘルパーの協力のもと自宅で介護を受けることです。
万が一体調が悪化した場合は、自ら病院へと足を運ぶ高齢者が多く見られます。
しかしながら、自ら病院へ出向かなくても医師に自宅で診察をしてもらえる「在宅医療」という方法もあるのです。
ちなみに「在宅医療」は、週に1回・月に1回など医師が自宅に出向き医療を行う「訪問診療」と、具合が悪くなった時にかけつけて医療を行う「往診」の2つのタイプに分けられます。
現在日本では高齢化社会が進んでいる状況を受けて、在宅医療の推進に力を入れています。
在宅医療の目的は、レベルの高い治療ではない
現在の日本の医療は、医療機関でのみ高いレベルの治療が受けられるという現状となっています。
つまり、在宅医療の目的は、レベルの高い治療ではないのです。
では、高齢者にとってどのような場合に、在宅医療は役に立つのでしょうか?
もちろん、命を左右するような緊急事態の時や病気が深刻な場合は、在宅医療では十分な医療サービスを受けられませんので、適していないでしょう。
しかしながら、比較的病状が安定している・経過観察だけで良いという介護ベースの場合は、わざわざ病院に出向いてくる必要のない在宅医療が適していると言えます。
入院をすると慣れ親しんだ自宅を離れて、家族と離れて生活することになるので、高齢者にとっては精神的な負担が大きくなってしまいますので・・・。
ですから現状を維持しながら医療サービスを受けられる在宅医療に、国だけではなく現役医師たちも推し進めていく意思を示しているようですが、なかなか浸透していかないのが問題点とされています。
在宅医療の問題点とは?
高齢化社会である日本において、今後ますます在宅医療の重要性は高まっていくことでしょう。
しかしながら、その背景にはいくつかの問題点があります。
問題点1:在宅医療を行っている医療機関が少ない
国が在宅医療の重要性を認めているにも関わらず、現在在宅医療を行う届出をしている医療機関は、全国で約1万カ所に留まっています。
なぜなら、患者の容態が急変してもきちんと対応できるように、医療機関が24時間体制をとることになり、医師への負担が非常に大きくなるからです。
もちろん、医師を雇う医療機関の経営負担も倍増します。
病院で治療をするだけではなく、医師が電話対応・自宅訪問・治療・緊急時の入院の手配まで1人でしなければならないのは、確かに負担も大きくなりますよね。
在宅医療を行うということは、1年365日、24時間対応が出来る医療機関でなければいけないため、非常にハードルが高くなっているのです。
問題点2:診療報酬の点数が低く、運営が難しい
在宅医療は、病院を経営する側からしてみれば「儲からない事業」と言えるでしょう。
在宅医療では手術などの高度な医療サービスを提供できないので、どうしても診療報酬の点数が低くなってしまいます。
その上、医師が患者の自宅を訪問する手間がかかったり、医師や看護婦の人件費もかかることから、運営が難しくなってしまうのです。
これはあくまでも、経営側の問題になります。
問題点3:家族の肉体的・精神的な負担が大きい
在宅医療は、正直に申し上げて家族の肉体的・精神的な負担が大きいと言えます。
入院は患者の精神的なストレスや費用は否めないとしても、万全な医療体制の中で適切な治療を受けることができるので、家族も安心して医師や看護婦に任せられます。
一方で在宅医療は、家族が患者の体調をきちんと把握しておかなければならないので、どうしても介護をする側の負担が大きくなってしまうのです。
いくら患者本人が、慣れ親しんだ自宅での在宅医療を希望しても、家族の意向が強く反映されて実現に至らないというケースも多く見られます。
参考URL http://tipsonelderlycare.irahik.com/cat7/post-11.html
高齢者が自分らしく暮らせる~地域包括ケアシステム~
日本は、世界有数の高齢化社会の国です。
現在は国民の4人に1人が65歳以上の高齢者となっており、今後ますますその割合は増加していくことでしょう。
そこで、厚生労働省はいわゆる団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、【地域包括ケアシステム】の実現に踏み出そうとしています。
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住みなれた土地で人生の最後を迎えるまで自分らしく暮らせるように、医療・介護・住居・生活支援など全体的に地域の包括的なサービス・サポートを強化していくという取り組みです。
入院をするのは確かに安心な面もあるでしょうか、1日中ベッドに寝たままの状態では食欲も意欲も湧いてこないという高齢者も少なくありません。
もし自宅で病状を観察していけるのなら、自分の趣味やご近所との付き合い、好きな食べ物でリフレッシュなど、自分らしく過ごしていける環境が整いますよね?
どちらが幸せなのかは個人の考えによりますが、高齢者にとって地域包括ケアシステムの構築はとても重要な要素となるはずです。
在宅医療が抱える3つの誤解とは?
お話を進めていく上で、在宅医療が抱える誤解について避けて通ることは出来ません。
ここでは、3つの誤解についてお話していきます。
誤解1:在宅医療を広げれば良いというわけではない
在宅医療が広がりを見せれば、確かに高齢者の医療サービスはもっと充実することでしょう。
しかしながら、どんどん訪問診療の患者さんを増やせばよいというわけではありません。
在宅医療実現のためには医師や看護婦、医療設備など大きなコストがかかることを忘れないようにして下さい。
訪問診療の患者さんを増やしたところで、それを受け入れることが出来なければ何の意味もないのです。
誤解2:在宅=自宅ではない
在宅というと、自宅で受けられる医療に限定して考える方がいらっしゃいますが、決してそうではありません。
老人ホームなどの介護施設を人生最期の場所にされている方も増えていますので、在宅=自宅と定義するのは間違っています。
誤解3:在宅医療は診療所のすること
ドラマなどを見ていると、自宅で診療所を開いている医師が近所の高齢者の自宅に訪問診療に出向くシーンを目にすることがあります。
ですから、在宅医療は診療所の医師が行うものだと勘違いしている人も少なくありません。
これが、誤解です。確かに診療所の医師が高齢者の自宅まで出向く機会は多いかもしれませんが、バックには病院がついて在宅医療をサポートしているのです。
在宅医療における訪問看護の重要性
在宅医療は医師だけではなく、看護スタッフの存在も非常に重要です。
訪問看護のスタッフは、自宅で医療サービスを受けている患者の元へ出向き、医師の指示に従いながら診療の補助や療養をしていく上でのお世話をしてくれます。
薬の服用確認・血圧や食事量などの健康チェック・床ずれ予防・ガーゼなどの医療用品の手配などをしてくれるのです。
公的保険を利用する場合は、訪問看護の回数も決まってきますが、自費で利用する場合は1人1人の状態に合わせて回数や時間などを調整していくことができます。
高齢化社会が進み、在宅医療の需要が高まると共に、訪問看護の需要も高まっていくことでしょう。
最期に
いかがでしたか?在宅介護をしていく上で、在宅医療はとても大きな意味を有するでしょう。
しかしながら、どこでも誰でも利用できるサービスなのかというと・・・現状では厳しいと思います。
今後ますます高齢者の数も増えていきますので、高齢者が自分らしく過ごすことが出来る環境が整うことを願いましょう。
「在宅医療を利用してみたい!」という方は、全国在宅療養支援診療所連絡会の公式ホームページをご覧になってみてください。(http://www.zaitakuiryo.or.jp/)
在宅医療について(Home Cares Net 全国在宅療養支援診療所連絡会)
全国の在宅医療医の一覧リストは、以下のサイトに掲載されています。
会員リスト(Home Cares Net 全国在宅療養支援診療所連絡会)
在宅医リスト(日本ホスピス・在宅ケア研究会)
地域包括ケアシステムや訪問看護のことにも触れてください
参考:http://www.asahi.com/articles/SDI201607182091.html